2023年09月14日 耐震
耐震・制震・免震の違い
岡本工務店の岡本耕介です。
日本のような地震大国では断熱や気密性能ももちろん大事ですが、住む人の命を守るための地震対策がなによりも重要となります。
地震に強い家を建てるためには地震の揺れに対抗できる強い構造がないといけません。
前回は地震対策のひとつである制震ダンパーについて書きましたが、今回はそもそも耐震・制震・免震構造とはそれぞれどういったものなのか。
それぞれの違いについて書いていきたいと思います。
まとめ
【耐震】
・建物自体の構造の強さで地震の揺れに耐えて倒壊を防ぐ
・揺れを抑えるわけではないので揺れがダイレクトに伝わり建物にダメージが蓄積される
・現行の耐震基準を満たしているから安全とは限らない
【制震】
・ダンパーなどの制震装置で地震の揺れを吸収し建物を揺れにくくする
・揺れを抑えるので建物へのダメージもある程度防ぐことができる
【免震】
・免振装置により建物と地盤を切り離すことで揺れを受け流し地震の揺れが伝わらなくする
・揺れを大幅に軽減出来るため建物へのダメージをかなり軽減できる
耐震・制震・免震とは?
耐震
耐震は制震・免震と違い建築基準法などの法令で最低限クリアすべき基準が定められており、家を建てるうえでとても重要なものです。
「制震・免震構造」は耐震構造にプラスαで地震に対して強くなるので有るとなお良いというものですが、「耐震構造」は無くてはならない絶対に必要なものです。
耐震構造は壁や柱を強化し建物そのものの強さで地震に耐えます。
現行の耐震基準は2000年の改正によって設けられた「新・新耐震基準や2000年基準」と呼ばれているものです。
「2000年基準」は1981年に改正された「新耐震基準」で建築された木造住宅が、阪神淡路大震災によってたくさん倒壊・半壊したことをきっかけに制定された基準です。
「新耐震基準」からの主な変更点は以下3点です。
①地盤の耐力に応じた基礎の設計
②接合部分に使用する金物の規定
③耐力壁の配置バランスや偏心率などの規定
この基準では耐震性能により耐震等級1~3に分けられます。(数字が大きいほど耐震性能が高い)
・「耐震等級1」:数百年に一度程度の地震(震度6強~7程度)で、損傷は受けても人の命に関わるような倒壊はしない。
・「耐震等級2」:耐震等級1の1.25倍の地震に耐えられる性能・耐震強度の水準。災害時の避難所となるような公共施設では耐震等級2以上が必須。
・「耐震等級3」:耐震等級1の1.5倍の地震力に耐えられるだけの性能・耐震強度の水準。消防署や官公庁など防災時に、重要な拠点となる建物と同等レベルの耐震性能。
では、建築基準法で定められている最低限の耐震性能「耐震等級1」を満たしていば、それだけで十分な耐震性能があるのかといえば答えはNOです。
2016年熊本地震では前震と本震の両方で震度7を観測し多くの木造住宅で損壊や倒壊の被害が出ました。
倒壊した住宅の中にはわずかですが現行の「2000年基準」で建てられたものもあり、熊本地震のような繰り返し起こる巨大地震に対しては「2000年基準」を守っているだけでは不十分ということが分かりました。
しかし「耐震等級3」を満たした木造住宅の倒壊はゼロで、被害があった住宅も一部損壊程度で済んでいることから今後いつ来るか分からない巨大地震から命を守るためには「耐震等級3」が必須といっても良いでしょう。
制震
制震とはダンパーなどの制振装置により地震の揺れを抑えることです。
耐震は建物を堅くすることで地震に耐えますが、制震は揺れを抑えることで建物の耐久性の向上に繋がります。
耐震等級をあげていくと建物は堅くなり丈夫にはなりますが、その分地震の衝撃をもろに受けることになります。
いくら高い耐震性能を持つ住宅でも、度重なる地震によりダメージが蓄積されていくと新築当初の性能を発揮できなくなってしいます。
そのような耐震構造だけではどうすることも出来ない弱点を補えるのが制震という考え方です。
制震装置は地震の大きなエネルギーを吸収することで住宅の構造が受けるダメージ減らし長く安全に住むことが出来ます。
大きな地震に耐える耐震構造ももちろん大事ですが、日本では震度1以上の地震が年間1,000~2,000回程度あるので、いかに建物へのダメージの蓄積を防ぐのかが重要になってきます。
導入にかかるコストも免震装置に比べると安価なことが多くコスパも良いのでおすすめです。
制震ダンパーについては前回書いた記事をご覧いただければと思います。
免震
免震とは建物と地盤の間に地震の揺れを吸収する装置を設けることで、地震の揺れを建物に伝えにくくすることです。
免震では建物に伝わる揺れを一定以下に抑え込むことができるため、揺れが原因で起こる構造へのダメージの蓄積や家具・家電の転倒のリスクを軽減させられます。
震度7程度の非常に大きな地震の揺れでも影響を受けにくいため地震の対策として非常に有効です。
地震に対して大きな効果がある免震ですがデメリットもあります。
・耐震、制震と比較して最もコストが高い
・縦方向の地震に弱い
・施工できる業者が少ない
・後付けは難しく費用も大きくなる ・・・等々
大きなビルや高層マンションなどでは採用されることもありますが、木造住宅においてはまだまだ免震の歴史が浅く採用しているのは一部の大手ハウスメーカーなどにとどまっています。
耐震や制震に比べると、免震は導入やメンテナンスで莫大な費用がかかるので費用対効果をしっかりと考慮したうえで導入するか決めた方が良いですね。
最後に
制震ダンパーの記事でもお伝えしましたが、まず基本となるのは耐震性能を高めることだと思います。
今後の巨大地震に備えるためにも「耐震等級3」の耐震性能の高い家づくりを目指し、そのうえで制震ダンパーなどのプラスαの構造で、より高い耐震性能が長持ちするようにしていければ良いですね。
耐震等級3+制震ダンパーで基本的には十分な性能があると私は考えておりますので、免震装置にお金をかけるのであればその分を家の内装や設備、断熱材などにかけた方がずっと住んでいく上で幸せかもしれません!
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