2022年12月17日 性能
「基礎断熱」と「床断熱」の基礎知識
岡本工務店の岡本耕介です。
皆さんと共に「大阪で注文住宅を建てるために本当に必要な知識」を学んでいくブログを書いています。
今回は『基礎断熱』と『床断熱』について勉強しました。
せっかく壁の断熱をしっかりしたとしても、足元の断熱をおろそかにしてモコモコのスリッパで過ごさないといけないような家になってしまっては意味がありません。
断熱はどこかを重点的にすればOKというものではなく、いかに家全体をきっちり断熱し、家の中と外の熱の出入りがなくなるようにするかが大切です。
どれだけ足元以外の断熱がしっかりしていても足元の断熱をしっかりしておかないとそれだけで光熱費も変わってきてしまいます。
今回は冬でも暖かく暮らせるようになる足元の『断熱』についてお伝えしていきます。
目次
まとめ
- 『基礎断熱』は床下空間を外気から遮断して室内と同じように扱い、換気や温度調整がされる。
- 『床断熱』では基礎に換気口を設置して通風を確保し、床下と外気がほぼ同じ温度になる。
- 『基礎断熱』と『床断熱」にはそれぞれメリット、デメリットがあるので理解する必要がある。
基礎断熱とは?
『基礎断熱』とは、床下空間も室内空間と同じように断熱を行う方法で鉄筋コンクリートで出来た基礎を断熱材で覆う施工方法のことをいいます。
この施工方法は昭和50年代に北海道など寒冷地の汎用技術として確立した技術で比較的新しい施工方法と言われています。
建物の最下部である基礎に断熱材を使用し基礎から熱の出入りを防ぐことで床下の温熱環境をコントロールするので床下だけに断熱材を入れる『床断熱』に比べて気密性も上がり暖かく真冬でも快適な住宅を作りやすいと言われています。
床断熱とは?
『床断熱』とは、1階床部分のすぐ下に断熱材を敷き詰めることで床から断熱する施工方法のことをいいます。
現在建っている日本の住宅のほとんどがこの断熱方法を採用しています。
古くから使われている断熱方法ですので採用している工務店・施工会社が多く、コストを抑えて施工することができます。
また、施工箇所が床のみになっているので数年後のリフォームなどの対応もしやすくなっています。
基礎断熱と床断熱のメリット・デメリットは?
基礎断熱
【メリット】
1.断熱性・気密性が高く室内が暖まりやすい
『基礎断熱』では土台に使用する気密パッキンにより外気が床下空間に侵入しない為、床下空間と室内が同じ環境となります。
その為冬でも床下からの冷気が部屋に伝わることがなく快適に過ごすことができます。
2.水道管の凍結を防げる
『床断熱』の場合は凍結の防止のために電気で暖める「凍結防止帯」などを使用し電気代が発生するので基礎断熱に比べ毎月余計な費用を支払うこととなります。
それに比べ『基礎断熱』は床下と室内との温度差が少なくなる為凍結を事前に防ぐことができます。
3.基礎コンクリートの地熱利用で省エネ効果
冬場は外気より暖かい地面からの熱の影響で蓄熱し、床下から暖めてくれます。
逆に、夏場は外気温より地面の温度が低いため、コンクリートが冷やされます。
【デメリット】
1.シロアリ対策が必要
基礎断熱をするとその後床下を確認する機会はなかなかありません。
ですので工事時にキチンと防蟻処理をしておかないと侵入されても気づきにくく被害が大きくなってしまう可能性があります。
2.湿気対策が必要
家が完成してから1年程度は基礎のコンクリートから水分が出るためは最初の1年程度は水分が床下空間はしっかりと換気が行われていないとカビが発生しやすくなってしまいます。
床下の空気を循環させるために24時間換気システムの設置等を検討する必要があります。
床断熱
【メリット】
1.結露やシロアリのリスクが少ない
『床断熱』の場合は床下用の換気口が基礎に設けられます。
その換気口により十分な換気量が確保されていれば結露は発生しにくくなりますが、空気の滞りがあると夏と冬のように外気と室内の温度差が大きい季節は結露しやすくなってしまいます。
2.昔からある工法なので安定している
古くから『床断熱』はあるので施工に慣れている職人さんが多く、コストも『基礎断熱』と比べると抑える事ができます。
【デメリット】
1.足元が冷える
真冬になると基礎コンクリートが冷やされその冷気が室内に入り込む場合があります。
また夏場は床下が外気温より低くなるので夏の暖かく湿った空気が触れることで結露が起きてしまう可能性があります。
2.気密性の確保が難しい
『床断熱』は『基礎断熱』に比べて気密性を確保するために処理しなければならない箇所が増えます。床下への配管部やユニットバス周りの気密処理をしっかりとしておかなければなりません。
『基礎内断熱』と『基礎外断熱』はどちらがいい?
基礎断熱は、2種類の方法があり基礎の内側に断熱材を施工する方法を「基礎内断熱」、外側に断熱材を施工する方法を「基礎外断熱」と呼びます。
【基礎内断熱】
「基礎外断熱」で起こってしまうシロアリ被害を防ぎながら基礎断熱ができます。
メリット:断熱材の厚みを増やすことができる
断熱施工・気密処理は外周部に集中して行えば良い
デメリット:床下空間の換気経路の取り方が複雑
複雑な断熱材貼りが必要
【基礎外断熱】
「基礎外断熱」はあまり普及していない断熱方法ですがしっかりとした施工力さえあれば効果的な断熱方法です。
メリット:床下温度が安定する
地熱を利用しやすい
デメリット:シロアリ被害にあいやすい
ちなみに岡本工務店の新築では
岡本工務店の新築では基礎内断熱を標準としています。
基礎外周部立上りの内側と底面に断熱材を貼ります。(写真左)
お客様のご希望やご予算により基礎の下に断熱材を敷き、より断熱性能を高めることもあります。(写真右)
基礎断熱の場合に心配されるシロアリと湿気の対策は防蟻処理と24時間全熱交換型換気システムsumkikaを採用することで対応しています。
最後に
今回は『基礎断熱』を推奨している記事になってしまいましたが『基礎断熱』と『床断熱』のどちらが良いとは言い切ることはできません。
もちろん『床断熱』の方が一般的に使用されている工法なのでミスも無く安価に施工を進めることができます。
ですが『基礎断熱』でもしっかりとした施工力のある会社に工事を依頼し、事前に床下を含めた換気計画すれば問題なく施工することが出来ます。
費用面も長い目で見ると高い断熱効果により光熱費が抑えられるのでトータルで見ると基礎断熱がお得になるかもしれません。
どちらがいいか皆さん自身で判断していただき『基礎断熱』でも『床断熱』でも、どちらを選ぶ場合でもしっかりと施工してくれる会社にお願いすることをおススメします。
私たち岡本工務店では、創業115年来建築を通して笑顔をつくってきました。
その思いを胸にこれからも皆さんが家づくりをするうえで重要な知識を中立的に情報提供していくことをお約束します。